日経BP社のニュースリリース

 

2004年3月12日


2004年「日経BP技術賞」決定
大賞は「脳の活動状態測定技術」と「性能10倍のキャパシタ」


 日経BP社主催の2004年(第14回)の「日経BP賞」がこのほど決まりました。

 本賞は日経BP社がわが国の技術の発展に寄与する目的で創設したものです。
 毎年一回、電子、情報通信、コンシューマーIT、機械システム、建設、医療・バイオ、エコロジーの各分野で、産業や社会に大きなインパクトをもたらす優れた技術を表彰します。

 今回は2003年に開発された技術の中から、審査委員会(委員長:田中昭二国際超電導産業技術研究センター副理事長)が、以下の大賞と部門賞を選出しました。

 大賞は、小泉英明日立製作所研究開発本部技師長らの「光トポグラフィーを利用した、脳の活動状態を測定する手法の開発と研究」と、最上明矩日本電子開発本部専任副理事らの「質量エネルギー密度を従来技術の10倍に高めた電気2重層キャパシタ『ナノゲート・キャパシタ』」の2件に決まりました。

 このほか、14件の部門賞を決めました。
 表彰式は、4月9日午前11時から東京・虎ノ門のホテルオークラで行います。

〈大賞〉
▼光トポグラフィーを利用した、脳の活動状態を測定する手法の開発と研究
 小泉 英明 株式会社日立製作所 研究開発本部 技師長
 牧 敦 株式会社日立製作所 基礎研究所
 健康システムラボ 主任研究員
 山本 剛 株式会社日立製作所 基礎研究所
 健康システムラボ 研究員
 木口 雅史 株式会社日立製作所 基礎研究所
 健康システムラボ 主任研究員
 川口 英夫 株式会社日立製作所 基礎研究所
 健康システムラボ 主任研究員
 市川 祝善 株式会社日立メディコ 柏事業所
 応用機器開発室 室長

 赤血球が酸素と結合しているか否かで変化する近赤外線の反射スペクトルの計測によって、脳の活性部位を特定する手法。頭部に固定できる小型装置のため、日常生活の様々な場面における脳の活動状態を測定することが可能となった。

▼質量エネルギー密度を従来技術の10倍に高めた電気2重層キャパシタ
「ナノゲート・キャパシタ」
 最上 明矩 日本電子株式会社 開発本部 専任副理事
 竹内 誠 日本電子株式会社 開発本部 技術顧問
 小池 克巳 日本電子株式会社 開発本部 主幹研究員
 岡村 廸夫 株式会社岡村研究所 代表取締役

 材料や焼成手法の工夫により、電気2重層キャパシタの質量エネルギー密度を88Wh/gと、既存品の10倍に高めた。これにより、これまで、極めて限定的な用途にしか利用できなかった電気2重層キャパシタの応用範囲が拡大する可能性が出てきた。


〈部門賞〉

◇電子部門
▼五段昇圧時の変換効率が95%と高いチャージ・ポンプ型DC-DCコンバータ技術
 名野 隆夫 三洋電機株式会社 セミコンダクターカンパニー
 アドバンストテクノロジーBU 専任部長

 回路設計やトランジスタの工夫によって、チャージ・ポンプ型電源回路(DC-DCコンバータ)の五段昇圧時の変換効率(入力電圧に対する出力電圧の比)を95%に高めた。電源回路の小型化に貢献した。多機能化のための設計空間創出に寄与する。

▼データ記録速度が200Mビット/秒を超える相変化光ディスク技術
 青井 利樹 TDK株式会社 開発部 部長
 宇都宮 肇 TDK株式会社 新商品事業化推進グループ
 BLDグループ 部長
 新開 浩 TDK株式会社 新商品事業化推進グループ
 BLDグループ 研究員
 加藤 達也 TDK株式会社 新商品事業化推進グループ
 BLDグループ 研究主任
 井上 弘康 TDK株式会社 新商品事業化推進グループ
 BLDグループ 研究主任
 平田 秀樹 TDK株式会社 新商品事業化推進グループ
 BLDグループ 主任技師

 SARCと呼ぶ記録膜の急冷構造とTb-Sb-Te-Ge系の熱的に安定な記録材料を組み合わせ、相変化光ディスクで216Mビット/秒という記録速度を実現。相変化記録は光磁気記録系に比べ速度的に劣るというが、それを打ち破り、光ディスクに新たな世界を拓いた。

◇情報通信部門
▼Windowsネットワーク解析ソフト「VISUACT」
 佐内 大司 セキュリティフライデー株式会社 代表取締役
 有元 伯治 セキュリティフライデー株式会社 技術部
 VISUACT開発室 室長
 関 英信 セキュリティフライデー株式会社 技術部
 技術企画室 室長

 ネットワーク上でWindowsマシン間の通信データを捉え、内容やシーケンスなどを解析することで、個々のユーザーの処理内容を時系列にトラッキングする技術。セキュリティー上、ネットワーク上の処理連携の履歴を手軽に収集・管理できる点で意義深い。

▼DDos攻撃からネットを守るMovingFirewall
 斎藤 勲 日本電信電話株式会社
 情報流通プラットフォーム研究所 主幹研究員
 藤木 直人 日本電信電話株式会社
 情報流通プラットフォーム研究所 主任研究員
 冨士 仁 日本電信電話株式会社
 情報流通プラットフォーム研究所 主任研究員
 Eric Chen 日本電信電話株式会社
 情報流通プラットフォーム研究所
 柏 大 日本電信電話株式会社
 情報流通プラットフォーム研究所
 大西真樹 日本電信電話株式会社
 情報流通プラットフォーム研究所

 DDos攻撃に対応して、対処プログラムが動的に分散することで、従来技術とは異なりネットワーク全体を守ることを実現した。インターネット上で様々なビジネスを安心して展開するための基盤技術になる可能性がある。

◇コンシューマーIT部門
▼コンパクトデジカメのズームレンズ格納技術「スライディング・レンズ・システム」
 野村 博 ペンタックス株式会社 イメージングシステム事業本部
 開発センター第3開発部
 江口 勝 ペンタックス株式会社 R&Dセンター第11研究室

 デジタルカメラの光学ズームレンズ機構を2ブロックに分割し、電源オフ時に中央のレンズブロックがスライドして上がり、レンズ機構を上下2段に収納する。その結果、光学3倍ズームレンズを搭載しながら、薄さ2cmのデジカメを実現した。

▼「ThinkPad」に採用したハードディスク・アクティブ・プロテクション・システム
 下遠野 享 日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所
 専任研究員
 木下 秀徳 日本アイ・ビー・エム株式会社 ポータブル・システムズ、
 第3ポータブル製品 課長
 小川 満 日本アイ・ビー・エム株式会社 ポータブル・システムズ
 主任開発技術担当部員
 加藤 敬幸 日本アイ・ビー・エム株式会社 ポータブル・システムズ
 主任開発技術担当部員
 田中 章義 日本アイ・ビー・エム株式会社 ポータブル・システムズ
 第二エンジニアリング ソフトウェア 副主任開発技術担当員
 清水 康仁 日本アイ・ビー・エム株式会社 ダイレクト・ビジネス推進
 SO担当員

 パソコンの姿勢を検知し、落下など筐(きょう)体に衝撃を受ける予兆があった場合にヘッドを退避させることで、ハードディスクのクラッシュ予防を実現した。20万円前後の普及価格帯機種に搭載できた点で、モバイルパソコン市場拡大の貢献にもつながる。

◇機械システム部門
▼蒸気爆発を利用したアモルファス材料の製造
 古谷 正裕 財団法人電力中央研究所
 原子力技術研究所 主任研究員

 従来は、火山の噴火や火災など災害に絡む現象として捉えられ、難しいとされていた蒸気爆発が起こるかどうかの判定基準作りに成功。この結果を生かして、アモルファス金属を安く大量に供給することにつなげた。

▼用途に合わせて内容を調整できるCADデータ交換技術
 小寺 敏正 株式会社エリジオン 代表取締役社長
 相馬 淳人 株式会社エリジオン 開発1
 ジェネラル・マネージャ
 盛田 栄 株式会社エリジオン マーケティンググループ
 ジェネラル・マネージャ
 堀野 文孝 株式会社エリジオン マーケティンググループ
 ASFALIS担当

 独自の三次元データ形式をデータ交換の仲立ちに用いることで、異なった三次元CAD間で情報欠落の少ないデータ交換を実現した。さらに、データの用途に応じた編集や加工も可能にした。

◇建設部門
▼光触媒舗装による環境改善技術の実用化
 野々山 登 株式会社フジタ 建築本部 エンジニアリング統括部
 環境・エネルギーエンジニアリング部 課長
 構口 武志 フジタ道路株式会社 技術本部
 技術部 技術部長
 津々見 毅 太平洋セメント株式会社 ゼロエミッション事業部
 電力鉄鋼グループ リーダー
 廣部 義夫 石原産業株式会社 無機化学営業・技術本部 機能材料営業部
 東京営業グループリーダー

 道路舗装の表面に光触媒の層をつくる技術を実用化した。これにより、自動車の排気ガス中の窒素酸化物を、人体への害が少ない物質に化学変化させことができる。光触媒技術が積極的に環境を改善するための用途にまで拡大しつつある中で、その先駆的な事例といえる。

▼都市計画・建設技術の総合化による六本木ヒルズの開発
 山本 和彦 森ビル株式会社 取締役副社長

 国内最大級の市街地再開発を都市計画・建築計画・建設技術の総合化によって実現し、都市再開発の1つのモデルを提示した。六本木地区ににぎわいをつくりだした話題性も評価された。

◇医療・バイオ部門
▼国産ヒトES細胞株の樹立に成功、供給体制を確立
 中辻 憲夫 京都大学 再生医科学研究所
 教授(所長兼務)
 末盛 博文 京都大学 再生医科学研究所
 附属幹細胞医学研究センター 助教授

 霊長類ではまだ一般的な技術ではない胚性幹細胞株(ES細胞株)の樹立に、日本で初めて成功した。これまで海外からの輸入に頼っていたES細胞研究が、国内での社会的同意のもとに推進するメドがついたという意義は大きい。

▼シラスウナギの人工生産技術
 田中 秀樹 独立法人 水産総合研究センター養殖研究所
 生産技術部繁殖研究グループ チーム長
 塩谷 格 日本水産株式会社
 中央研究所養殖系 主任研究員
 中森 俊宏 不二製油株式会社 食品機能剤事業部
 食品機能剤開発室 主事

 人工的環境下でレプトケファルス幼生をシラスウナギに変態させることに、世界で初めて成功。人工生産されたシラスウナギが養殖用種苗になり得ることを示した。また、これまで生態がよく分かっていなかったウナギの研究に弾みがついた。

◇エコロジー部門
▼耐熱性、耐衝撃性などを高めた電子機器向けケナフ強化ポリ乳酸
 位地 正年 日本電気株式会社 基礎・環境研究所
 エコマテリアルTG 研究部長
 芹澤 慎 日本電気株式会社 基礎・環境研究所
 エコマテリアルTG 主任
 井上 和彦 日本電気株式会社 基礎・環境研究所
 エコマテリアルTG 主任研究員

 トウモロコシなど植物を原料とするプラスチック・ポリ乳酸をケナフ繊維で強化した材料。熱変形温度も67℃から120℃に向上し、ノートパソコン向け材料として十分な機械的物性を備えた。循環型社会構築に向けての象徴的な一歩となった。

▼蛍光灯を無電極にして長寿命化する技術
 業天 正芳 松下電器産業株式会社 照明社
 開発グループ 主任技師
 関 勝志 松下電器産業株式会社 照明社
 開発グループ 技師
 片瀬 幸一 松下電器産業株式会社 照明社
 高槻工場 技師
 保知 昌 松下電器産業株式会社 照明研究所
 主任研究員
 倉地 敏明 松下電器産業株式会社 照明研究所
 主任研究員
 宮崎 光治 松下電器産業株式会社 松下技術情報サービス株式会社
 専門部長

 電極を不要にして寿命を従来の電球型蛍光灯の四〜五倍に当たる三万時間に延ばした蛍光灯。電力のロスも削減した。長寿命化で資源効率の向上、廃棄物削減効果が得られる。


【審査委員】(敬称略、五十音順)

審査委員長
 田中 昭二 国際超電導産業技術研究センター副理事長

審査委員
 大石 道夫 かずさディー・エヌ・エー研究所所長
 岡田 恒男 東京大学名誉教授
 川島 一彦 東京工業大学大学院理工学研究科教授
 木村 文彦 東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻教授
 窪田 芳夫 東京電力顧問
 小林 繁夫 東京大学名誉教授
 後藤 滋樹 早稲田大学理工学部情報学科教授
 櫻井 靖久 東京女子医科大学名誉教授
 芝野 耕司 東京外国語大学情報処理センター長
 アジア・アフリカ言語文化研究所教授
 鈴木 基之 放送大学教授
 高橋 三雄 麗澤大学国際経済学部教授
 谷本 勝利 埼玉大学工学部建設工学科教授
 寺田 雅昭 内閣府食品安全委員会委員長
 永田 勝也 早稲田大学理工学部機械工学科教授
 中野 栄二 東北大学大学院情報科学研究科教授
 西村 吉雄 大阪大学フロンティア研究機構特任教授
 淵  一博 東京工科大学工学部情報工学科教授
 水野 博之 高知工科大学総合研究所所長
 安田  浩 東京大学国際・産学共同研究センター長
 山本 良一 東京大学国際・産学共同研究センター教授
 脇  英世 東京電機大学情報通信工学科教授
(受賞者、審査委員長の所属、肩書きは選考時点のものです)

日経BP社広報部

 

 日経BP技術賞に関するお問い合わせは、「日経BP技術賞」事務局・先端技術情報センター内 電話:03-5210-8175にお願いいたします。
 また、広報に関するお問い合わせは、広報部:長谷川、宇田川 電話:03-5210-8556にお願いいたします。

 


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