日経BP社のニュースリリース

 

2007年10月18日


第6回 日本イノベーター大賞、受賞者決まる
大賞には米テルモハート社長兼CEOの野尻知里氏
優秀賞はQRコードの原昌宏氏、アイデア賞に消せるボールペンの千賀邦行氏


 日経BP社は2007年「第6回日本イノベーター大賞」の受賞者を決定しました。

 日本イノベーター大賞は、日本の産業界で活躍する独創的な人材にスポットを当てることにより、日本に活力を与えようと2002年に日経BP社が創設した賞で、今年が6回目となります。
  新しい産業やビジネスモデル、将来を支える新技術、世界に通じる新しい価値を創り上げたことによって、今の日本に活気をもたらした人を幅広い分野の中からノミネートし、選考を進めてきました。

 先日、最終選考委員会を開き、次の方々に賞を差し上げることに決定しました。
 なお、表彰式は11月27日、午後5時から、東京・港区のホテルオークラ東京で行います。



■受賞者

大賞 野尻 知里氏 米テルモハート社長兼CEO(最高経営責任者)
優秀賞 原  昌宏氏 デンソーウェーブ自動認識事業部事業開発室主幹
アイデア賞 千賀 邦行氏 パイロットインキ商品開発部課長第2開発部主査


■選考理由

 日経BP社の日本イノベーター大賞は、独創的なアイデアや技術で新市場の開拓に挑む日本人を表彰するものです。今回も従来通り、「日本経済に新たな活力をもたらそうという気概、勇気に富み、新たな市場、ビジネスモデルの創出に貢献した人」という観点から選考を進めました。受賞者に対する評価は、以下の通りです。

 大賞を受賞した野尻知里氏は、体内に埋める補助人工心臓「デュラハート」を開発、今年2月欧州での発売にこぎ着けました。
  最近の人工心臓は心臓を温存し、負担が最も重い、血液を全身に送り出す役割を担う左心室だけを補助する左心室補助型が主流になっていますが、長期に使うと血栓が発生しやすく、いかに血栓ができにくい構造を作るかが大きな課題となっていました。心臓外科医である野尻氏は、京都大学とベアリング大手のNTNが共同考案した磁気浮上型遠心ポンプの技術を導入してこの問題を解決、移植を待つ患者の心臓治療に大きな可能性をもたらしたことが評価されました。
 デュラハートは、血液を送り出すポンプ内部の要である羽根車を永久磁石と電磁石で挟み、羽根車をリニアモーターカーのように中に浮かせたまま回転しながら血液を押し出す仕組みです。羽根車を支える軸受けが不要で、部品同士が接触する部分がない構造のため、血栓ができにくく、機械的な摩耗や故障の可能性も低いとされています。2004年1月から欧州で行った臨床実験では、33人の患者に使用し、82%の成功率を記録しました。
 心臓移植の潜在需要は世界で年間20万人と言われています。重症の心不全の治療法は現在、心臓移植しかありませんが、ドナーの数は限られています。デュラハートは大きさが直径7センチ、厚さ4.5センチと小型で小柄な日本人にも埋め込めるうえ、患者が腰につける制御用のコントローラーとバッテリーも合わせて約2キロ程度と軽量です。患者が通常の生活を送ることができ、QOL(生活の質)を大幅に向上させた点も評価されました。

 優秀賞に選ばれた原昌宏氏率いるチームは、大量の情報を扱える2次元コード「QRコード」を開発し、自社の作業効率を高めただけでなく、特許の無償公開によって、一般消費者の生活にも大きな変化を与えたことが評価されました。
 QRコードはもともと、デンソーが取引先のトヨタ自動車に部品を納品する際の納品書(通称カンバン)に盛り込む情報量が増え、従来のバーコードでは対応が難しくなったために、1992年に開発に着手したものです(デンソーウェーブは2001年にデンソーが産業機器部門を分社化して設立した会社です)。
  当時はカンバンにバーコードを二つ印刷するなどして対応していましたが、代わりに作業員が目で確認する文字が小さくなり、作業が煩雑になっていました。原氏率いるチームは、縦横二方向に情報を記憶させることで、バーコードの数十〜数百倍の情報量、英字換算で最大4296文字のデータを記憶させられるQRコードを開発し、作業効率を大幅に改善させました。
 しかし、トヨタグループ内だけでの使用では、普及が限られ、コード読み取り機などのコスト負担が膨大になり、事業性に乏しいと判断。1994年の開発と同時に特許の無償公開に踏み切った結果、QRコードは国内の自動車・自動車部品業界の標準になり、さらに幅広く一般消費者向けの広告ツールとしても利用されるようになりました。
 消費者がカメラ付き携帯電話でQRコードを撮影するだけで、新商品などの情報を読み込めるポスターや、野菜や卵のパックに印字されたQRコードを撮影すれば、生産地や加工日などを確認できるツールとして利用が広がっているほか、航空券のチケットレス化にQRコードを活用する事例も出てきました。企業に低コストで新たなツールを提供するとともに、一般消費者の生活に利便性をもたらしたことが受賞の大きな理由になりました。

 アイデア賞の千賀邦行氏は、書いた文字を消去できるボールペン「フリクションボール」に使われているインクを開発しました。フリクションボールはペンの端にあるラバーで書いた文字をこすると消えるペン。インクが約65℃の温度で透明になり、摩擦熱によって文字が消えたように見える仕組みです。
 商品化には二つの課題がありました。一つは約65℃で一度透明になった状態を常温でも維持すること、そして、ボールペンの書き味を損なわないよう、顔料となるマイクロカプセルを髪の毛の太さの約40分の1というサイズにすることでした。
 3年かけてこれらの課題を解決し、今年3月、パイロットインキの親会社であるパイロットコーポレーションがフリクションボールを日本で発売したところ、人気を集め品切れとなる文房具店が相次ぎました。既に欧州でも発売され、同社は2007年の国内外での販売目標を当初の2500万本から3000万本に引き上げています。ボールペンの文字が消えるという斬新な発想力とその技術開発力、そして文房具という成熟市場において新たなビジネスチャンスを創り出した点が評価され、今回、選考委員会によって特別にアイデア賞を授与されることになりました。


■選考委員長

 小宮山 宏 東京大学学長

■選考委員(五十音順)

 坂村 健 東京大学教授
 鳥羽 博道 ドトールコーヒー名誉会長
 丹羽 宇一郎 伊藤忠商事会長
 松永 真理 バンダイ取締役
 宮内 義彦 オリックス会長
 米倉 誠一郎 一橋大学教授

日経BP社 コーポレート管理室・広報部


 日本イノベーター大賞に関するお問い合わせは、日経ビジネス編集・石黒、戸田、松浦 電話 03-6811-8101にお願いいたします。
 また、表彰式の取材に関するお問い合わせは、日本イノベーター大賞表彰式事務局(MIC内)電話03-5566-0208にお願いいたします。


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